フィリップ・ファールバッハ1世(1815−1885)はヨーゼフ・ランナーやヨハン・シュトラウス1世存命中から「第3の」作曲家として嘱目されていたという.また,息子フィリップ・ファールバッハ2世(1843−1894)ともどもシュトラウス家と親交があり,いい意味でライバルであったとも伝えられている.しかし,その曲はファールバッハ2世のポルカ「カーレンベルクの村で」以外はほとんど知られていない.
このCDでは,ファールバッハ1世の曲を4曲(ワルツ1曲,ポルカ3曲),ファールバッハ2世の曲を7曲(ワルツ2曲,ポルカ3曲,ギャロップ1曲,その他1曲),1世か2世か不明な曲3曲(ワルツ1曲,ポルカ2曲)を一挙に収録している.恐らくは2人の代表作なのであろう.嬉しいことである.
2人に共通しているのは,特にワルツが抒情的で美しいことである.この点ではシュトラウス2世の初期の作品に少しも見劣りがしない.しかし,ファールバッハ家は,ヨハン・シュトラウス2世が,「聴くワルツ」,そして「シンフォニック・ワルツ」として1864年にワルツ「朝刊」を発表したことで,ウィンナ・ワルツの世界での覇権を完全に奪われてしまった.
しかしながら,ファールバッハ2世のワルツ「ヨーゼフ・シュトラウスの想い出」は素晴らしい.親友であった夭折したヨーゼフに対する想いを切々とうたいあげた抒情詩であり,挽歌であって,シュトラウス2世の後期の作品に見劣りしないと私は思っている.
演奏は,有名なウィーン・ビーダーマイヤー・ゾリステンであり申し分はない.特に第1バイオリンのハンス・グレッツァーのリリカルな演奏には引き込まれる.ただ,一部の曲で管の音色が浮いているのは残念であるが,全体の出来栄えはそれを超えてすばらしい!
珍しい曲,そしてすばらしい演奏である!
ファールバッハ:ワルツとポルカ 関連情報
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