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 ペドロ・アルモドバル監督は私のお気に入り監督の一人です。 この監督作品の特徴は,1 恋愛を描いていてもどことなくサスペンスフルな脚本2 映し出される風景や家具など色づかいが美しくセンスが良い3 映像内映像(劇中劇など)を巧く演出に取り入れている といった点が挙げられるのではないかと思っていますが,本作もその例外ではありません。 パッケージからはサスペンス的要素を感じさせませんが,二つの時間軸を交互に描き出すことで,次第に物語の全貌が明らかになっていくという展開は「トークトゥーハー」「私が,生きる肌」のようにサスペンスフルでもあります。 このあたり,アルモドバル監督の脚本力を感じさせます。 そして映像的に巧いとうなった次のようなシーンがありました。 ペネロペの愛人である実業家のマルテルは,その嫉妬心から彼女の行動を毎日息子に撮影させ,それを自宅に写しだし確認している。 その映像には音声が録音されていないため,唇の動きから話している内容を読み取る読唇士の女性をそばに座らせている。 そこにペネロペが帰ってきて,映し出される自身の映像に合わせて,自分が喋った言葉をその場で喋る。 映像の中の女性と同じ人物が,映像のそばにいて,映画というひとつの映像のなかに二人が並んで映し出される。 本作ではペネロペ演じる映画が劇中劇として流れますが,こういった場面はアルモドバル監督作品の他の作品でも観ることができます。 「オール・アバウト・マイ・マザー」でも女優が自分が撮影されたポスターの横に立つシーンがあり,「私が、生きる肌」では監視カメラに写る女性を男が観るというシーンがありました。 映像の中に別の映像や写真を映し出す。 このどこか倒錯したような映像感覚がアルモドバル監督ならではの美的映像感覚なのでしょう。 抱擁のかけら [Blu-ray] 関連情報

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アルモドバルのミューズ=ペネロペ・クルスのために書かれたような作品。主人公のレナ(ペネロペ)は女優になる夢をあきらめきれない大富豪の愛人で、人気脚本家マテオ(ルイス・オマール)とドラマ製作を通じて知り合い、瞬間的に恋に落ちる華のある役柄だ。これでアルモドバル作品には4回目の出演となり、人気女優としての貫禄がボディにもつきはじめたペネロペは、本作でも自慢のバストをおしげもなくさらけ出している。盲目の脚本家ハリー・ケインは、過去にマテオ・ブランコという名前を捨て、今は余生を静かに過ごしていた。弟子のディアゴとその母ジュディットが生活の面倒を見ているハリーの元に、新しい脚本執筆の依頼が舞い込んだ。ライXと名乗るその男に理由を尋ねると、ゲイである自分を遠ざけてきた父親の記憶に対する復讐をしたいと言い出したのだった。ストーリーいつもながらのミステリー仕立て。ライXとは何者で目的は何なのか?ハリーはなぜ視力を失い、名前を捨てたのか?ペネロペ演じるレナの存在がすべての謎のキーとなっているのだが、人気作家マテオの肝いりで製作されたドラマがなぜ××に終ったのかという、非常に抽象的な謎に力点をおいたがために、ミステリーの焦点が少々ぼやけてしまったのが残念な作品だ。それに拍車をかけたのがペネロペ・クルスという女優自身の演技力であったとは何たる皮肉。大富豪の愛人/人気作家の恋人/ドラマのヒロインA+/ドラマのヒロインB−と、微妙に演じ分ける必要があった4つのパーソナリティが、すべていっしょくたに見えてしまったのは私だけであろうか。<実力はあるけれど今までなぜか芽がでなかった女優>という側面を、ペネロペの平板な演技からどうしても感じることができなかったのである。テーマ選びや構成自体はアルモドバルらしく巧みだっただけに、(監督の願いむなしく)ミューズとしての演技力にやや不満が残る1本となってしまった。 抱擁のかけら [DVD] 関連情報




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