わたしを離さないで ランキング!

わたしを離さないで 日の名残り (ハヤカワepi文庫)

映画を見てからこの本を購読しました。思ったより映画が原作に忠実に作られているように感じましたが、やはり「1人称による視点のずれ」の効果など、映画では表しにくい部分もありますし、主人公の長いモノローグなどは、テーマを掘り下げるのに重要な部分なので、時間的・場面的制約のある映画より、小説の方が理解しやすかったように思います。…いくつかあった人生の重大な転機において、ある意味極めて皮相な「品格」や「忠誠」に固執したがために、それと気づかぬうちに、ことごとく(より倫理的、人間的生き方への)軌道修正のチャンスを失っていった主人公が、イングランド西部への旅の途上、過去の記憶を反芻し、また、いくつかのハプニングに見舞われるうちに、徐々にその虚飾があらわになり、旧知の元女中頭との再会を経て、遂に真実と向き合わざるを得なくなってしまい、後悔と絶望の念に駆られる…。何も大きな事件は起こりませんし、抑制的な筆致でひたすら淡々と回想が進むのですが、読後の深い味わいは格別です。そして、ある意味悲劇の主人公を見守るイシグロの視線には、暖かなものがあるように感じます。老境に差し掛かった、決して幸せとは言えないであろう執事の人生を、否定している訳ではありません。もちろん全面的に肯定しているわけでもありません。取り返しのつかない事柄への後悔と感傷、それも人生の一部であり、それでも生きている限り、前に進むべきだ、進むしかないのだということを感じさせてくれます。また、様々な価値観や利害が対立、衝突する現代社会において、「品格」や「偉大さ」を他律に求めた生き方の限界というか、悲劇が提示されていますが、他方でその古典的なストイシズムが、大英帝国の凋落と歩を一にして失われつつある古き良き伝統や文化への郷愁と相俟って、独特の哀しさと美しさをこの小説に与えています。近いうちに原書でもう一度読みたいものだと思いました。 日の名残り (ハヤカワepi文庫) 関連情報

わたしを離さないで わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

SF的な形式をとりながら、人間のエゴイズムについて掘りさげた小説だなあと、私は思いました。『日の名残り』にも共通する、知り合いの思い出話を聞くような文章で、すんなり読み進んでいけますが、数ページでその異常さに気づき、それは章がひとつ進むごとに増していきます。「人間」でありながら人間ではないキャシーHたちと一緒に、彼らを生み出した「人間」の善良さに期待していくと・・。人間の善良さとはいったい何なのか。実は私たちも形を変えた「提供者」ではないのか。読み終わったあとも、読者にいろいろ考えさせる力を持った作品です。実は私も読み終わった夜、心がざわざわして、よく眠れませんでした。カズオ・イシグロの作品のなかでも、最も読みやすく、また、翻訳の土屋政雄さんの日本語が、私はとても好きでした。 わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫) 関連情報

わたしを離さないで The Remains of the Day

国家が、初老のオヤジが、思い出が・・・・

暮れていくまえの、輝きの記憶。

騒がないで、黙っていないで、忘れないで。

品格国家イギリスの礼節は冷淡なる現実をも

美しく包み込んでしまう。

そうして、日本にも、この小説の主人公たちが

かつて確かにいたし、今もいる。

英文のレベルは大そう高く、どちらかといえば

難文。読みがいあります、少し・・・泣けます。 The Remains of the Day 関連情報

わたしを離さないで ジョン・グレイ博士のこの人と結婚するために―恋の始まりからプロポーズまで相手の気持ちを離さない愛のルール (知的生きかた文庫―わたしの時間シリーズ)

一通り、読み参考になりましたが、再度読むつもりです。ただ、どの本にも共通している事は、女性から気持ちを打ち明けてはいけないという事ですがそうなると、最初に興味をもってもらえなかった場合に、それでその人との関係は、終わりという事なのかでも最期に秋元さんの部分に赤い糸で結ばれている相手とは、何があろうと切れる事はないという部分になるほどと、もっと自信を持とうと思いました。 ジョン・グレイ博士のこの人と結婚するために―恋の始まりからプロポーズまで相手の気持ちを離さない愛のルール (知的生きかた文庫―わたしの時間シリーズ) 関連情報

わたしを離さないで Never Let Me Go (Vintage International)

 Ishiguroの小説を初めて読んだ。流れるようなリズムを持った
不思議な英文に身を任せているうちに、最後には、胸を締め付け
られるような悲しみの描写の中にいた。通常は、SFの手法に
よくあるように、「ありえたかもしれない世界」は、外部からの
視点で描かれることが多いと思う。それを一人称の回想で描きだす
手法は、きわめて独自性が高く、リアリティを感じさせる完成度
に達していた。この物語の描く、生まれ持った特殊性と、その悲劇に、
映画「ブレードランナー」を思い出すひともいるだろう。最初の
1冊なので、この作者のことはよく知らないが、古典となりうる
風格をこの一冊に感じた。
Never Let Me Go (Vintage International) 関連情報




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